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基準のお話

設計や加工を行っていると必ず基準をどこにするかを考えなくてはいけません。

円筒形状なら中心を基準にした設計や加工が望ましいように、基準あっての設計、加工なのですが、設計は基準(原点)がどこであっても設計は出来るんですが、加工の場合基準(原点)が特に重要になります。

 

実際に加工を行った後のワークを見て、どのような工程を経て加工を行ったのかよくわからないモノには興味が湧きます。

 

単純形状であっても実際に自分が加工する場合、どのような手順で加工を行ったらいいのか悩むような形状のものは結構たくさんあったりします。

 

リールパーツの中でもシンプルな形状なんですが、見ただけで加工手順が判りにくいものがあります。

写真にあるこの真鍮製のパーツ これはスプールボビンというものでフライラインを巻き付ける部分に相当します。

このボビン形状をどのように加工するのでしょうか?

 

外径形状を加工した後にセンター穴を加工しようとしても旋盤でクランプ出来そうにありません。

 

 

実際の加工手順は丸棒を切り出して、長さを整えます。

次にセンター穴加工をして所望の穴径の貫通穴加工を行います。

最後に外径加工を行うのですが、この時に治具を用いて加工を行います。

 

治具と言っても円筒の一部がボビンの内径に合うように加工されただけのものです。

この治具ををボビンに挿入してボビンの他方を芯押し台で押して加工を行うだけなのです。

(主軸でクランプしているののが治具です)

 

これだと加工途中にバイトがボビンに食い込んで加工できなくなるのではないかと不安に感じる方はある程度の加工に精通されている方だと思います。

 

旋盤加工においての鉄則は、加工抵抗<摩擦抵抗を維持できればいいのです。

具体的にはボビンを押している治具とボビンとの摩擦抵抗が、バイトによる切削抵抗よりも大きければボビンは回転し続けるため加工は成立するのです。

 

なので、バイトの切削量が大きくなると、加工抵抗<摩擦抵抗を維持できずにボビンの回転が止まってしまうのです。

 

バイトの先端の一部だけで切削しているため案外切削抵抗は小さいものなのです。

 

ですから簡単な治具を工夫することにより加工が可能になります。

この治具を考えるのも加工者のセンスだと思います。

 

旋盤のドリルチャックもテーパーのついた軸を押し込んだだけで加工を行っているので、これも加工抵抗<テーパー部分の摩擦抵抗であれば加工できることを物語っています。

では、このリールフットはどのように加工を行っているのでしょうか?

これま、また別な機会に!