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リールハンドルノブ

ハンドルノブ交換の依頼やハンドルの交換依頼がこのところ増えておりまして、自分が作製しているリールのパーツを流用できるならいいのですが、専用に加工しなければならない場合が案外大変だったりします。

 

ある程度の数を加工するのであれば、しっかりと図面を引いて、NCプログラムを作成して効率的に、また形状安定性を保つためにも自動加工を目指すのですが、1個だけの加工とかになるとフリーハンドの加工になり、楽しいのですが時間が掛かるのです。

 

今回は少し太いハンドルノブだったので、ハンドルノブの内部に入れ込むメタルコアと呼んでいるパーツのサイズも必然的に大きくなるため手持ち材料の中で一番近い材料φ17mmのニッケルシルバーを切り出します。

これも1個のみの加工なので、金ノコで切り出します。(帯鋸盤が欲しいです)

この季節は切断により体が温まります。

 

このニッケルシルバーの棒の端面加工を行い、心押台を使用し、C穴加工、ドリル加工、座グリ加工を行います。

その後外径形状を加工したのちに突っ切り、突っ切り面を再度加工して規定寸法に加工します。

その後、各部分の糸面取り、研磨を行った後にC穴部分にリーマを通して規定寸法に仕上げます。

 

この加工は結構楽しく加工できます。(写真は加工しながら片手の写真を撮影したのでピンボケしています 笑)

今回は鹿角でハンドルノブは加工して欲しいとの依頼だったので鹿角を削ります。

小さなパーツを加工する際に大きく材料を取れば加工しやすいのですが、鹿角のように曲がってたり、材料が高価な場合なかなか大きく材料を取って加工することができません。

 

そのような場合は、まず適当にチャックしてC穴、Φ4mm程度のドリル加工を行います。

その後このΦ4のドリル穴に対して途中まで入り込むようなテーパーを付けた治具を加工します。

(写真ではチャックの咥えている真鍮のパーツがそれに該当します)

真鍮パーツの鹿角のドリル穴部分を差し込んで、心押台で加圧して外径を円筒状に加工します。

この時、切り込み量が大きいと真鍮パーツは回転、鹿角はバイトに引っかかって回転せずという状態になります。

要するに、真鍮のテーパー部と鹿角との滑り抵抗とバイトによる切削抵抗との関係が、滑り抵抗のほうが大きければ加工でき、

切削抵抗のほうが大きければ鹿角は回転せず、真鍮パーツだけが空回りするのです。

 

空回りした場合は、更に芯押し台を押し込んで滑り抵抗を増やすか、バイトの切り込み量を下げて切削抵抗を小さくすればよいことが簡単に判ります。

 

このような簡単な治具を駆使しながら加工すると無駄な材料消費がなく、効率的に加工が出来ます。

外径の円筒加工が終われば、真鍮のパーツを外して、鹿角をチャックして両端面の加工を行います。

鹿角の長さを規定値まで加工できたら、再度真鍮パーツチャック固定して外径形状を整えます。

 

その後、面取り加工、研磨加工を行えばハンドルノブは完成です。

と言うことで今回依頼のありましたハンドルノブの完成です。

加工前に、ハンドルノブ形状変更があれば対応しますと伝えましたが、今までついていたハンドルノブ形状を再現して欲しいとの依頼でしたので、そのように加工を行いました。

 

以前のノブはヒビ割れしたそうです。

鹿角、マンモスの牙、その他動物の角関係は水分により膨張します。また、乾燥により収縮します。

もちろん温度変化により伸縮します。ですからハンドルノブに直接ねじ止めしたものはこれらの伸縮に晒され、動きが悪くなったり、摩耗したり、ひび割れしたり、ガタツキが大きくなったりと色んな現象が生じてしまいます。

 

私の加工するノブは内部にメタルコアと呼んでいる金属製の中間部材を介在させ、周辺材料と熱膨張率を合わせております。また、ハンドルノブとメタルコアの接着は熱膨張を吸収する接着剤を使用することで熱膨張や水分等に伴う伸縮を吸収するように配慮しております。

 

また、万が一の転倒やリールの落下等によりノブが破損してもメタルコアを持ってリールを回転させることができるようにしております。

 

釣り人にとって一番いやなことは釣りの途中で釣りを中断しなければ行けない事です。

今回はハンドルノブのお話でした。

 

皆さん、良いお年をお迎えください。

ハンドクラフト展でお会いしましょう!