Fly Boxの加工で、前回まではP型ヒンジを使ったタイプを作製しておりました。
このFly Boxは3.5mmの板厚の板材を利用して加工しております。
加工は120mm×65mmサイズの板材6枚から加工しておりますので、加工材料の体積としては、163800mm³となっております。
この薄板接着、積層タイプのFly Boxの特徴としては、使用材料が少ない事が大きな特徴です。
限りある資源ですから使用材料が少ない事は大きな魅力であり、環境負荷の小さな工法だと言えます。
他の特徴としては、加工パーツ数が多く、加工時間が掛かること、加工後のパーツのバリや面取り加工等々に時間が掛かり、更に接着工程が多いため硬化時間が掛かり、トータルでの作業時間が長いということができます。
今回新たに加工したFly Boxは厚さ17.8mmと10.8mmの板材をエンドミルで掘り込み加工したFly Boxです。
ヒンジはP型ヒンジではなく、キャビネットヒンジを使用して加工してみました。
加工材料の体積計算をしてみたところ、25030mm³となっておりました。
薄板接着、積層タイプと比較して1.5倍以上材料消費が多くなっております。
加工時間は掘り込み加工に時間が掛かるため薄板接着、積層タイプよりも機械加工時間は掛かります。
しかしながら、接着工程等がないので トータルでの作業時間は掘り込み加工の方が短く、疲労の少ないプロセスと言えると思います。
ヒンジの違いによる作業時間の違いもありますが、このキャビネットヒンジを使用して、掘り込み加工を行なったFly Boxについては
どこに特徴があるの?と言われたときに言葉に詰まってしまいます。
キャビネットヒンジは穴あけ加工した穴に入れて接着するだけで完成してしまう非常に便利なものです。
敢えて問題点があるとすれば、穴深さが9mm必要になるということです。
したがって板厚としては10mm以上の板厚が必要で、Fly Boxであれば問題ないのですが、フライパッチのように薄手のBoxを作製したい場合にはこのキャビネットヒンジは使用できないことになります。
このように使用するシチュエーションが限られることが問題と言うことです。
掘り込み方式の最大の課題は材料消費とするならば、その消費を抑えることができれば良いということになります。
問題は、掘り込みにより除去加工をしていることが材料消費を増やし、加工時間の増大につながっています。
結論から言いますと、掘り込み方式では底部分を残す加工のため、それ以外の部分は除去加工していますが、底の部分はあとで接着するようにすれば、除去加工ではなく輪郭加工で必要な部分のみ切り出して加工することができます。
この写真で言うならば、おおよそ96mm×51mm×14.8mmと96mm×51mm×7.8mmの板材を残して加工することが可能になります。
この残り材で他のパーツ加工が出来れば、例えば残り材でフライパッチ等が加工できれば材料消費を抑え、副産物も加工できることになるのです。
ちなみに加工材料の体積である25030mm³から上記板材体積を除去して、底板部分の体積と足すと92931mm³となり、
材料消費に関しては薄板接着、積層タイプよりも少なくなるのです。
また、加工時間も一番短縮でき、まさに理想のプロセスとなるのです。
このプロセスは薄板接着、積層タイプと掘り込み加工タイプの長所を抜き取ったようなプロセスで、加工時間も材料消費も抑え、環境に優しいプロセス、ロハスプロセスと名付けましょう。
P型ヒンジとロハスプロセスの組み合わせで、環境負荷の少ないFly Boxを作ろうと決めました。
今回のように加工してみないと見えてこない事、数値化しないと見えない事が他の加工にも当てはまると思うので、誰かの受け売りを信じるのではなく、自分の手で、自分の目で見たもの、加工したものを信じる癖をつけたいと感じた今回の加工でした。