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Victorinox Wood Cover

Victorinox Classic SDという小型のナイフです。

このブログでも度々紹介しておりますが、他に類を見ない商品だと考えています。

 

よく個人でこのウッドカバーを作製されているのを見るのですが、ピンセットと爪楊枝の収納部を省略されているのがほとんどです。

私が作製しているウッドカバーはピンセットも爪楊枝も収納可能なように加工しております。

 

この小さなVictorinox ナイフの加工ですが、いろんな要素が詰まっています。

まず、本体とウッドカバーはカシメるように嵌め込んでいるんですが、この嵌め込みようの座グリ穴加工と、上述したピンセットと爪楊枝の収納部の加工、および外形加工はCNCスライスで加工しています。

 

3次元設計したウッドカバーをエンドミルでの加工条件を基にCAMでNCプログラムを作成していくんですが、これらの作業を通じてCAD,CAMの勉強ができます。

切り出したウッドカバーはヤスリがけをして、コーナー部分のR形状を作り上げます。

その後サンドペーパーで#240 #400 #600 #1000の順で仕上げていきます。

 

コーティングは、シーラントを全体にコーティングした後に1液性のウレタンをコーティングしていきます。

綺麗に研磨しても細かな凹凸やコーティング剤の染み込みバラツキの影響でコーティング表面が乱れます。

これは何度もコーティングしたのちに表面をサンドペーパーで再度研ぎだして、再度コーティングを行います。

 

コーティングにより、すべての面が綺麗にコーティングされるのは非常にまれです。

細かな埃が混入したり、小さな泡があったりして、コーティングだけで完了することはまずありません。

#2000までサンドペーパーで水研ぎして、その後、白棒、ピカールで研磨します。

よく、SNS等でピカールでピカピカに磨きました!!などと投稿している人が居りますが、ピカールは

番手換算すると#4000程度です。

ピカピカではなく、よく見ると細かな傷が無数に入っています。

それでも金属などは自己光沢性があるので、それらしく綺麗に見えるんですが、実は鏡面からは程遠い状態なんです。

 

さて、ピカールの後は、#8000の液状コンパウンドで研磨します。

これで一気に輝きが出てきます。

更に#15000の液体コンパウンド、#30000の液体コンパウンドで研磨していきます。

 

このような高番手のコンパウンドで綺麗にするには研磨する布によっても仕上がりに影響があるようです。

私は綿のTシャツの着古しを使用していますが、最後の仕上げでは、Tシャツの切れ端を濡らし、軽く絞った状態でコンパウンドを付けて研磨すると綺麗になるようです。

 

研磨完了と思ってよく見るとサンドペーパーの傷が少し残っていたりとか、何かに擦れて細かな傷が入ったりすることも良くありますが、その場合も妥協すること無く、#2000で軽く研磨したのちに再度コーティングプロセスへと戻ります。

 

コーティングのコツは妥協せずに、勇気を持って立ち戻ることです。

コーティングで培った技術は他のウッド製品に応用できます。特にハンドルノブやスタッカー等の円筒形状であれば旋盤にチャックして研磨可能なので楽です。

また、色んなウッド材料を加工、コーティングするとそれぞれのウッドの特性が判るようになります。

アイアンウッド等の固い材料は、コーティングの染み込みが少なく、バリ等も少ないので加工しやすい材料になります。

 

花梨等の瘤材は木目がランダムになっているので、加工の方向性を気にすることなく加工できます。

バリも少なく、加工しやすいのですが、コーティングは染み込みやすい領域、染み込みにくい領域があり、手が掛かります。

 

バーズアイは方向性があり、バリの出やすい方向があります。

また、少し柔らかい材料なので傷つきやすい点に注意が必要です。

 

その他の材料としてはサペリを最近使用してみたのですが、木目が他の材料にはない美しさがあります。

この材料もバリが出やすく、コーティングが難しいんですが、安価で趣のある木目は価値がある材料だと感じています。

私は釣行時にはベストのポットに必ず忍ばせている。Victorinoxです。

特に使用する機会が多いのは、何かの拍子で爪が割れた時です。

ハサミでカットしてヤスリで整えて釣りを再開します。

 

あとは細かなトゲが刺さった場合やラインクリッパーを紛失した場合、服の繊維が飛び出した場合、皮膚のサカムケのカット等々色んなシーンで活躍してくれます。

 

でも、市販のVictorinoxのプラスチックのカバーは安っぽくて、味気なくて......。

さりげなく取り出したVictorinoxにウッドカバーが付いていたらかっこいいと思いませんか?

 

よく、フライフィッシングは形から入るとか、ファッション性が良いとか言われていますが、それはこだわりの強い釣りだからかのしれません。

それなら、自分の持ち物にもこだわって欲しいと思います。

 

Victorinox Classic SD普段使いから釣りまで、どんなシーンでもカッコよく演出してくれることでしょう。

 

税込4950円

花梨モデルは在庫がございます。

アイアンウッド、バーズアイに関しては、つるや釣具店で取り扱っております。