スタビライズドウッドというものがあります。
簡単に言えば木材に樹脂を含侵させたものです。
バンブーロッドの世界でも樹脂をバンブーの内部に含侵させるインプリと言う技法が古くからあるので、樹脂を含侵させる技術というもの自体は新しい技術ではないようです。
熱硬化性のアクリル樹脂等に顔料を混ぜて色味を出し、アクリル樹脂の液体中に沈めた状態で真空引きして、ウッド内部にアクリル樹脂を含侵させ、その後加熱してアクリル樹脂を硬化させて作製しているようです。
最近ある会社からスタビライズドウッドを入手いたしましたので、試しに加工を行なってみました。
ウッド材はトチだったように記憶しております。
あまり大きな材ではなかったので、ノブを加工してみることにしました。
直方体だったウッド材を旋盤加工して円筒状にし、ドリル加工してノブ形状にしております。削った後の形状を見ると、
緑色の樹脂が内部まで含侵しているのが判ります。
ウッド材への樹脂の含侵は柔らかい部分には樹脂が含侵しやすく、硬い所には含侵しにくいことが判ります。
ここではノブの高さ方向に一部樹脂が含侵しきれていない線状のラインが確認できます。
これは年輪部分のようにも見えます。
ノブを180°回転させた写真がこちらです。
ノブの高さ方向に一部樹脂が含侵しきれていない部分があり、そのラインに沿ってクラックが発生しています。
先ほど、樹脂は柔らかい所に含侵され、硬い所には含侵されにくいと言いましたが、柔らかく、樹脂が含侵された部分は樹脂が硬化したことにより補強され硬度が上昇しており、反対に固く、樹脂が含侵しきれていない部分は、樹脂による補強がないため他の部分と比較して、弱い部分となり、加工中の応力等によってクラックが生じたものと推測致します。
クラックを生じさせないためにはどうするか?
一つは、加工時の応力を抑える。
加工熱であったり、高負荷加工を止めて、ソフトな加工を行なう。
もう1つはウッドの繊維が1方向に延びているような材料ではなく、瘤材のように繊維がランダムになっているようなウッド材であれば、一部だけ強度的に脆い部分が無くなり、クラックの発生が抑えられるんではないかと考えます。
更に考えられることは、アクリル樹脂材の線膨張係数をウッド材に近いものにする(現実としてどの程度まで調整可能なものかはわかっておりません)
または、硬化温度を可能な限り低くする。
これは、硬化時の温度で均衡が保たれた状態で硬化し、室温に冷やされたときの温度差で内部応力が発生するため、この内部応力のある状態で機械加工等で外部応力を付与することでクラックが発生するのではないかと予測したためです。
自分自身で含侵させたりしていないので、どれだけの含侵条件幅があるのか等が判っていないので、詳しい事は判りませんが、クラック対策としては間違っていないように思います。
たまたま樹脂が結構均一に含侵した部分では問題なく加工できるものもありました。
樹脂が上手く含侵されている部分は結構綺麗な表面が出るのですが、最終的にコーティングしたほうが綺麗なようです。
さて、スタビライズドウッドを入手したので、テスト的に加工してみましたが、
私個人的には、自然のモノに人工的に色を足して作られたものに対してはあまり良い印象を持てていません。
しょせん、人工物になってしまうような気がして....。
素材として、今まで使えなかったものが使えるようになるのは良いことかもしれませんが、SGDsに対してはどうなのかとか、少し考えてしまうことがあることは確かです。
要望があれば使ってみる。
そんな感じですかね!