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A.T.H SALMONリールを左巻きへ!

Ari.T.HartのSALMONリールを左巻きに変更して欲しいとの依頼を受けました。

アリハートは奇抜なデザイナーで斬新なデザインでありながらバンブーロッドにも合わせられるリールデザインは国内でも人気があり、マニアの方も多いと思います。

 

恥ずかしながら、私はこのリールを見たのは初めてで、左巻きに交換できるのかどうかも判らない状態のまま預かってきたのでした。

 

SALMONリールと言うことで大きなリールで、写真のゴールドの部分を回すことでドラグの強度を調整可能になっていると聞きましたが、スプールを回して確認しましたが、ドラグ調整が出来ない状態になっていました。

 

とりあえず、部品構成が判っていないので、写真を残しながら分解を始めます。

まず、センターネジを緩めスプールを抜き取ります。

フレーム側に残ったギヤの付いたパーツ内にあるワンウェイベアリングを抜いて、方向を入れ替えれば左巻きに交換できることは確認できました。

 

ネットで調べてみると、ベアリングを抜く専用治具が存在するらしく、フライショップに連絡してみましたが、治具は見たことが無いとのことで、しばらく放置の状態でした。

 

ベアリングを抜くのはよくある作業なので、フライリールに限らず、ベアリングを抜くことだけについて調べると色々と情報が出てきました。

 

要するにベアリングの一部に力が加わるとベアリングが変形して使用できなくなる恐れがあるため、ベアリングを均一に加圧して抜くためのパーツ(治具)であれば簡単に作製できそうだと感じました。

ワンウェイベアリングは外径14mm長さ22mm 内径10mmでHFL1022という型番で一般的なワンウェイベアリングだということが判りました。

このワンウェイベアリングが写真の円筒状のパーツ内に圧入されているのです。

 

治具として、外径13.8mm、内径10mmの写真のような円筒状の段差パーツを加工しワンウェイベアリングにはめ込んで、万力でゆっくりと加圧して抜こうと考えました。

 

圧入部分にCRC556を吹き付けて、徐々に加圧をしていくと、突然「バキッ」っという音と共にベアリングが動き始めました。

 

この音がした瞬間は正直言って嫌な予感がしましたが、結果オーライで、無事にベアリングを抜き取り、方向を入れ替えて、圧入することが出来ました。

 

組立ですが、分解したパーツ配列ではどうもおかしいような気がして、試行錯誤しながら組み立てると、ドラグが効くようになり、無事に組立も完了と相成りました。

 

最初はどうなるかと思いましたが、なんとか左巻きに交換でき、自分でも満足にいく修理になりました。

 

依頼者も喜んでいただけたのが何よりです。

 

まだ手元には修理依頼のリール達が居ります。

中には大手術が必要なリールもあります。

直せないリールは、先発組から離れ、やがてガラクタとなってしまいますが、何とか修理できれば、先発組に残留出来ます。

 

リールメーカーの端くれとしては、使えないリールを使えるリールにしていくのも大きな仕事の一つだと考えております。