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Hardy-Flyweightの修理

6/16日に工房に入院してきたHardy Flyweight

渓流で転倒し、リールのフレームが折れてしまったとのこと。

 

思い入れのあるリールなので、修理してずっと使い続けたいということで、お預かりしました。

仕上がりについては、使えれば問題ないとのことでした。

 

リール到着後、早速チェックしました。

まず、破損したフレームは、欠損部分のパーツが同封されていましたが、長さが10mm程度足りず、破損パーツを繋ぎ合わせて修理することは不可能ということが判りました。

 

その他、ハンドルノブのグラつきもあり、結構大変な修理になりそうです。

 

ハンドルノブの修理に関しては、今まで結構修理してきましたので、問題ないのですが、フレームの欠損をどのように修理するか考えていました。

 

欠損部分のみを作り直しても、接合部分を目立たなくするのは難しそうですし、悩んでおりました。

結局欠損部分を取り除いて、取り除いたリング状のパーツを作り直して接着する方法で修理しようと考えました。

 

問題は作り直したパーツをフレームにどのように位置決めして接着するかなんですが、強度を確保するにはネジ止めするのがいいのですが、フレームにネジ穴があると、雰囲気が異なってしまうので、フレーム側とリング側にドリル穴加工を行ない、その穴にピンを入れて圧入し、位置決め接着しようと考えました。

 

まずは、リング状のパーツを設計しました。

 

リールのフレームをそのまま旋盤の主軸にチャックしてみましたが、ある角度にするときっちりとチャック出来ることを確認しました。

 

ところで、このFlyweightはリールフットがフレームにリベット留めされており、取り外せないため、リールフットの付いた状態で旋盤で回しながら、欠損部分を除去加工しました。

 

人様のリールを旋盤にチャックして、除去加工するというのは結構緊張するもので、結構緊張しながら加工を行ないました。

 

除去加工後にドリル穴加工をするのですが、フレームと、リングの同じ位置にドリル穴加工をしなければ位置精度を確保することが出来ません。

 

リング側は中心座標を求めるのは比較的簡単なのですが、リール本体の中心座標をどのように求めるのが良いのか悩みましたが、リールのセンターシャフトφ6.3mmに対応する穴加工したパイプを作製し、フライス盤の主軸にチャックして、そのパイプをリールのセンターシャフトに位置合わせした状態でリールをステージにクランプして、中心座標を求めました。

 

ドリル穴はリングの裏面側から加工して、穴深さを調整して、表面に出ない深さに調整し加工を行ないました。

 

ドリルはφ1mmを使用し、ピンはφ1.04mmに加工して、圧入できるようにしました。

 

リングは厚み3.15mmなので、クランプするのが大変でしたがなんとか加工できました。

ピンをリールのフレームに圧入し、リング側のドリル穴にも接着剤を塗布して、圧入して、クランプ保持して接着しました。

 

ハンドルノブも作製しました。

このリールフットがフレームにリベット留めされているFlyweightはノブ用のネジがインチネジではなく、メートルネジを採用しておりました。

時代の流れなのでしょうか?

同じ英国製でも時代によってインチネジだったり、メートルネジだったりとあまり変わって欲しくない部分までもが変わってしまうのは少し気分が覚めてしまいます。

 

ということで、Hardy Flyweightは大手術の末、無事退院の目途が立ちました。