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Bill Ballan Reelの修理

Bill Ballanの修理依頼がありました。依頼者の方は色々と修理先を探しており、私のところにたどり着いたとのことでした。

もしかすると以前修理したBill Ballanリールをブログに書いていたので、検索に引っかかったのかもしれません。

そうだとすると、このブログも誰かの役に立っているという事になり、嬉しい限りです。

 

さて、今回の依頼はクリック部分の不良とフレームを固定している10本のネジの内3本を紛失しているとのことで、修理して欲しいとのことでした。

 

まずネジですが、UNC#2-56×5/16というネジになります。

所謂ユニファイネジ(インチネジ)です。

これは以前に修理した際に購入していたネジの残りで対応可能です。

 

リールを分解してしていくと、クリック用ギヤとクリッカーが摩耗していることが判りました。

ギヤはフリーの状態でセンターシャフトに挿入され、スプールに設けられたφ1.5mmほどの突起部がギヤに設けられたφ2mmほどの穴にはまってスプールと同時に回転してクリックとして機能するシンプルな構造です。

 

クリッカーはどうやらサイドプレートにカシメられているようです。

最初はネジ止めされているだろうと思い、強引に反時計回りに回転させようとしましたが、回転せず、カシメられている部分をドリルで揉んで取り外しました。

このカシメ穴はφ2mm程度だったので、M2.6のタップ加工を行ない、クリッカー取り付け時に使用することにしました。

クリック部分の拡大写真です。

クリッカーのカシメを除去した後に撮影したものです。

摩耗状態が良くわかります。

ここで注意してみて頂きたいポイントは、クリッカーの先端がギヤの厚みの半分しか接触していない事です。

オーナーの方はクリックが弱くなったらギヤを反転させて使用し、全体的に摩耗してしまい修理依頼をされたのだと思います。

この摩耗したギヤに接するようにスプールが装着させるのでクリッカーを止めるカシメがギヤよりも高いとスプールと接触するため、クリッカーの高さを抑えているのだと思います。

 

ここではっきりと言います。

カシメありきで考えればこの方式は仕方がないのかもしれませんが、最適設計の観点から考えた場合この方式はダメダメです。

ギヤの半分にしかクリッカーが接触していなければ摩耗が速いのは当たり前です、接触面積と接触圧で考えると接触圧が一定なら接触面積が大きいほど摩耗しにくいのは当然の話で、それでもこの方式を採用しているということは安価にカシメで固定する方式ありきで考えられた構造だと思うのです。

先ほど書いたように修理はカシメではなくネジ止めするためにM2.6タップ加工しましたので、クリッカーはネジ止め固定します。

ネジ頭はクリッカーに座グリ加工してネジ頭が埋め込まれるように配置してやることでギヤよりネジ頭が突出してスプールと接触することはありません。

ギヤは3mm厚さにして、そのギヤとクリッカーがの接触面積が最大限になるようにクリッカーの下部にスペーサーを敷いて調整しております。

これで摩耗しづらい最適化設計が出来ました。

また、ギヤとクリッカーを同一材質で加工することでどちらかが変摩耗することを防止しています。

本来このような配置でクリッカーを取り付けえるべきなのです。

バネがクリッカーの一部にしか接触しておりませんが、バネの機能としては十分発揮できると思います。

 

また、摩耗した場合は、ギヤはフリーで取り付けられたいますし、クリッカーはネジを外せば交換可能になってりますので、メンテナンス性にも優れた構造になりました。

到着した時は白く濁ったハンドルノブは研磨して黒くし、グリスアップしております。

センターネジも黒ずんでおりましたので、軽く磨いて、各部にグリスアップして組み上げました。

まだ少しぎこちないカリカリ音もすぐに滑らかな音に変化するでしょう。

 

と言うことで、無事にBill Ballanリールの修理完了です。