リールのラチェット音はクリッカーとギヤの接触音によって奏でられます。
このクリッカーは各社各様で材質、形状、厚さがまちまちなのです。
本来であればクリッカーは耐摩耗性の良い材料が望ましい所なのですが、ギヤとの相性というか、どちらか一方の耐摩耗性が良くても結局耐摩耗性に劣る方が摩耗するので、ギヤ、クリッカー双方の材質を合わせるのがいいのかもしれません。
写真はORVIS CFO Ⅴ DISCのクリッカーを加工したものです。
厚さ1.2mm、長さ11mm程度の小さなパーツなのでどうやって加工したらよいものか結構考えました。
材質は真鍮なので耐摩耗性は良くありませんんが、私の所有している卓上フライス盤で加工できる材質には限りがありますので、加工性の良い真鍮で作製し、摩耗したら、何度も加工して作り直すというスタンスで加工しております。
このような小さなパーツを加工する際はクランプで押さえようとしても、加工するこのクリッカー部分を抑えることが出来ません。
なので、この材料自体をプレートに接着して、プレートをクランプして加工しようと考えました。
プレートはアクリル板を使用しました。
接着剤は、瞬間接着剤で真鍮板をアクリル板に接着しました。
加工プログラムを作成し、加工を開始します。
非力なマシンなので、切り込みを小さくして何度も切り込んで加工していきます。
順調に加工できていると思いきや、ある時点で接着剤が剥離して、ワークが飛んでしまいました。
飛んだワークを触ってみると結構な高温になっています。
瞬間接着剤で強固に接着されていても加工熱によって接着剥がれが生じたようです。
アクリルに真鍮板を接着していたので、加工熱を放出できず、真鍮に加工熱が溜まり高温になり、接着剥離したのではないかと推測致しました。
ならば、加工熱を放出しやすくすればよいと考え、アクリルではなく、熱伝導の良いアルミプレートに真鍮板を瞬間接着剤で固定して加工してみました。
果たしてうまくいくのか?
ひやひやしながら加工を見守っていましたが、最後まで剥離すること無く加工できました。
自分の推測が正しかったことが少しうれしかったです。
クリッカーのような小さなパーツは上記のような固定方法で加工が可能なことが判りましたので、以降の加工はこの方法で加工することにしました。
アルミプレートは厚さ10mm程度でφ80mm程度のジュラルミンを使用しております。
このプレートを使用すると、瞬間接着剤で固定し、加工後にワークに衝撃を咥えると簡単に剥離可能なこと。
プレートに付着した接着剤の剥離は、旋盤に取り付けて、表面をほんの少し除去加工すれば新たにきれいな面となるので、エンドミルの加工跡等があっても綺麗に再生可能です。
と言うことで、7月は10台程度リールの修理を行いましたが、今のところ、修理できませんとお断りを入れた修理はありませんでした。
修理ばかりでロッドやリールの加工が少し遅れ気味ですが、漸く修理が一段落出来ましたので、こうやってブログとして記述してまた、誰かのお役に立てればと思っております。
リールの修理で多いのはやはり転倒などで、ノブの破損、フレームの破損、リールフットの破損、クリッカーの摩耗、ねじ紛失と言った内容がほとんどです。
色んな修理に対して出来るだけ前向きに修理する方向でアイデア出ししながら作業するようにしています。
これらの姿勢はリールづくりにも反映されています。
最近は安いリールがたくさんあります。
それらのリールはコストパフォーマンスに優れたリールであることは言うまでもありません。
でも、それらの安いリールを転倒して壊してしまった場合、修理してまで使い続けますか?
修理代を考えたら、新しく購入したほうが安いかもしれません。
メルカリやオークションで安価で手に入るかもしれません。
でも、それは、愛着があるとは言わないのです。
これは、ブランドファッションとファストファッションの違いで例えるとよくわかります。
安ければよいという考え方と、自己満足を叶えるという考え方、色んな考え方がありますが、
出来れば私の作るリールは自己満足を叶えるリールであった欲しいと思っています。
そのために、大量生産できる方法ではなく、職人の手作りにこだわった美しさ、一目ぼれする輝きのこだわっています。
たかが糸巻き機ですが、所有する喜びを与えられるようなそんなリールを作りたいと思っています。
リールの修理は順次受け付けております。
どのように壊れているのか写真で説明頂ければおおよその見積もりを出せると思いますので、各種SNSやHPのコメント等でご相談いただければ対応いたしましので!
リールを見てみたいとか、ロッドを振ってみたいというご要望があれば、近くであればどこかで一緒にキャスティングや釣行もタイミングが合えば可能です。
何なりとご相談くださいませ。