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リール修理のあれこれ

リールの修理もコンスタントにあるんですが、よくある修理の話をしたいと思います。

現物写真を掲載するとメーカーを特定され、よろしくなさそうなので、関係ない写真を掲載しております。

 

ノブの修理で入庫してきたそのリールのハンドルを回すとスプールがスムーズに回らないのです。

オーナーさんもスムーズにハンドルを回せないので、ハンドルを固定しているセンターネジを完全には締め込まず、少し緩くしている状態だったのです。

 

ノブの修理を終え、本来ならばそのままリールを送り返せばいいのですが、うまく回転しないハンドル部分がなぜスムーズではないのかが気になったので、リールをばらしてみました。

 

状態を確認するとセンターシャフトに固定しているハンドルがフェイスプレートに接触して、スムーズに回転せず、同時に接触によりフェイスプレートに接触による擦り傷が付いていました。

 

元々はハンドルが接触しない構造になっているはずなのですが、フェイスプレートに接触するのはなぜなのか?

フレームに取り付けられている軸受を外すと、フレームとフェイスプレートの接着部分に隙間があるのです。

 

試しにその隙間部分のフェイスプレートを指で押さえると隙間が無くなります。

 

そうです。フェイスプレートとフレームの接着剥離によりフェイスプレートが膨らみ、ハンドルに接触していたのです。

その隙間部分にマイナスドライバーを突っ込むと簡単にフェイスプレートが外れてしまったのです。

 

剥離したフェイスプレートは少し反っていました。

また、フレーム側には接着剤が残っているのですが、均一に接着剤が塗布されているわけでもなく、いかにも適当に塗りましたと言う感じに接着剤が残っていたのです。

 

プラスチック材料とアルミの接着は簡単なようで難しいのです。

金属中では熱膨張率の高いアルミですが2.4×10-5/k程度、それに対してプラスチックは1桁大きい熱膨張率なのです。

フェイスプレートのサイズと温度差にもよりますが、冬場-10℃、夏場の車の中50℃

(温度差60℃)で考えると0.5mm以上の伸縮が発生するのです。

 

この伸縮に晒されると接着剤が剥離してしまいます。

 

ではどうしたらよいのか?

答えは2つ

1つは熱膨張率を合わせること(アルミを変更できないならプラスチック材料を変えること)

2つは接着剤をかえること(熱膨張による伸縮を接着剤の伸縮で対応できる接着剤を使う)

 

接着剤はいわゆる弾性接着剤を使用することで伸縮に追従して、剥離しにくくなるんです。

剥離しているフェイスプレートに弾性接着剤を丁寧に塗って接着しなおしました。

リールを組み上げるとハンドルがフェイスプレートに接触すること無く。スムーズに回転することを確認できました。

 

接着剤を深く考えることは少ないのですが、接着を間違えるとトラブルの元です。

カチカチに接着するのではなく、伸縮する接着剤を使用する方が良い事が多いです。

 

そのメーカーのリールのフェイスプレートの修理も何台も行いました。

また、熱により縮むこともあるようで、なかなか難しい材料を使っているようです。

機能美優先で、材料の諸元を見落とすと大きな代償があるようです。

 

同じ色合いであっても材料が異なると伸縮、接着性、反り、ひび割れ等々色んな変形を伴うことが予想されます。

材料を変えることは難しいかもしれませんが、接着剤を見直すことは比較的簡単にできます。