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No Name Reel修理

何度か修理を行なったことのあるフライマンより、リールの修理依頼を受けました。

メーカー名、モデル名が判れば検索して、内部構造を把握して、修理の方向性を見極め、おおよその見積もりをすることができるのですが、メーカー名、モデル名ともに不明とのことでした。

 

修理の可否は不明ですが、リールを送っていただき、修理できるか確認したいと思いました。

スプール径が3inch程度のリールですが、やはりどこにもメーカー名、モデル名の刻印等はなく、いつの時代のリールなのかも見当が付きません。

 

修理の内容としては、クリックがないとのことでした。

この写真を見れば一目瞭然なのですが、フレームに取り付けられた板バネがスプール側面を加圧することで、バックラッシュを防止することは出来るようですが、クリック音はしません。

 

板バネはフレームにリベット固定されています。

板バネにはスプールと接触する部分に樹脂製のパーツが付いています。

 

さて、このリールをクリック機構を設けるにはどうしたらいいのか?

少しの間考えました。

この板バネを流用することで、変更点を最小限に抑えられそうです。

スプールのバネ接触部分に凹凸があればクリックとして機能しそうだと考えました。

 

まずはリベット留めされている板バネを取り外します。

スプールと接触する部分の樹脂パーツは板バネにカシメられていましたが、これも取り外しました。

 

再度フレームに板バネを取り付けるためにフレームのリベット穴部にタップ加工をして、板バネをネジ止めできるように加工を行ないました。

スプール部分に形成する凹凸部はスプールにダイレクトに加工すると失敗した場合に修正できないので、アルミの1mm厚さのプレートに半円状の窪みをボールエンドミルで加工しました。

36個の窪みを加工しました。

 

このプレートをスプールに接着することで、板バネに新たに加工した凸部パーツがこの窪みに嵌り込み、クリックとして機能するという仕組みです。

 

この構成によれば、板バネを取り外した穴部にタップ加工したことと、スプールに1mm7厚のプレートを背着すること、板バネに凸パーツを取り付けると言う最小限の改造でクリックとして機能するだろうと考えました。

仮組してスプールを回転させると窪みに嵌り込む凸部パーツが嵌り込みすぎて、クリックがきつい。

この凸部パーツの先端部のRを大きくして確認してみるといい感じになったので、板バネの角度を調整して各部にパーツを取り付け、スプールには1mm厚さのパーツを接着し、各部分にグリースを塗って完成です。

 

写真はグリースを塗りまくった後の写真なので、少々汚く見えますがご希望のクリック音を奏でるようになりました。

 

試行錯誤しながらクイズを解くように難解な要望を形にしていく作業は楽しいのですが、結構な緊張感もあります。

 

リールを組み上げた状態ではほとんど外観には変更点はないのでクリックだけが新の追加されたようなリールとして復活いたしました。