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Hardy Ultralite 1000 FW DD修理

Hardy Ultralite 1000 FW DDの修理依頼がありました。

このリールはラージアーバーの現代的なリールで、2.3.4ロッドに最適なディスクブレーキ搭載のリールです。

 

私が個人的に思うことですが、HARDY社はこのラージアーバーリールを生産し始めた時から大きくイメージが変わりました。

今までの古き良き時代を継承してきたメーカーというイメージから、世の中の流行にのって、時代に流されたような印象を受けるのです。

勿論、古き良き時代のリールも継承されているのですが、メーカーとして利益追求するためにはメーカーとしてもスピリッツを変えても仕方がないと言ったように感じてしまい、段々と魅力が薄れてきたように感じます。

 

とは言いながら、自分もHardyのラージアーバーのリールを持っています。

出番はほとんどありませんが....。

 

さて、このHardy Ultralite 1000 FW DDですが、不具合はスプールを順方向に回転させても問題ないのですが、逆回転させるとロックがかかったようになるとのことでした。

この話を聞いた段階では何が原因なのかはっきりわからなかったので、修理できるかどうかわからないのですが、リールを送付していただきました。

 

スプールを取り外し、スプール内のワンウェイクラッチを抜き取ってセンターシャフトに入れて順方向に回すと当然ながら問題ありません。

逆方向に回すと、ワンウェイクラッチがロックするためにセンターシャフトのギヤが回転し、そのギヤと連動しているcが回転するのですが、そのギヤ同士のかみ合わせが悪く、空回りし、カクカクと変な感じになるのでした。

 

どうも回転によりギヤが噛んだり、噛まなかったりしているようで、ドラグ用ギヤががたついているように見えました。

 

そこで、ドラグ用ギヤをセンターシャフト側に引っ張った状態と、嚙み合わない状態の写真を撮りました。

 

写真のようにドラグ用ギヤのガタツキが大きく、これが主原因のようです。

他にギヤ自体の摩耗も見られますが、まずはこのガタツキを直せばよいことが判りました。

 

では、ドラグ用ギヤ部分を分解して....。

これってどうやって分解するんだろうか???

 

結構悩みましたが、ドラグ調整ノブに貼り付けられているドラグ強度のインジケーターを取り外すと分解できることが判りました。

このインジケーターは接着されているので、アルコールを少量垂らすことを繰り返して、デザインナイフの先端でこじるようにして取り外しました。

 

分解後にドラグ用ギヤ内径と、このいギヤを収納するドラグノブのシャフト径を計測しました。

ドラグ用ギヤ内径   :6.52mm

ドラグノブのシャフト径:5.93mm

おおよそ±0.3mmのガタツキがあることが判りました。

±0.3mmのがったツキがあれば、ギヤが噛んだり、噛まなかったりするのも無理はありません。

 

さて、原因は明確になりましたが、どのように修理すべきか?

まずは、このガタツキを無くすために0.3mmの肉厚のパイプを作製してギヤ内部に挿入してガタツキを無くそうと考えましたが、肉厚としては0.3mm以下になるので加工時に変形すると予想されます。

 

 

なので、内径6.52mmのギヤに7mmのドリルで穴あけ加工し、この穴に対して7mmの金属棒を圧入接着しました。

その後このギヤに対して内径5.9mmのドリルで穴あけ加工して、リーマーで仕上げてガタツキの無い状態にしました。

 

写真はギヤに金属棒を圧入接着したものを旋盤で加工している模様です。

 

ギヤの内径部分が摩耗したのかどうかは、このリールの新品状態が判らないので何とも言えませんが、兎に角この±0.3mmのガタツキを小さくすることによってギア同士がうまくかみ合ってしっかりとドラグが機能するようにしようと考えました。

ギヤ自体の摩耗ややかみ合わせが緩いのですが、ギアが抜けたり、滑ったりすることはないと思います。

組み上げて確認すると、しっかりとドラグが機能します。

 

最初は何が原因か判らないまま預かってしまったので、不安いっぱいでしたが、何とか分解出来て、原因を突き止めて、対策することが出来ました。

 

簡単な構造ですが、しっかりとドラグがかかる素晴らしい機構です。

1人の頭ではなかなか思いつきませんが、良い勉強になりました。