以前にもブログに書いたことがあるんですが、エボナイトをフェイスプレートに使用している私の作製するリールは、両軸リール、レイズドピラータイプ、エボナイトと私の自己満足感を満たすクラッシックタイプのリールです。
このリールをデザインする際に心掛けたこと
それは、このエボナイトのフェイスプレートの美しさを乱す、ネジ穴をフェイスプレートに設けない事です。
通常のリールでは、クリック用のパーツをネジ止めしたりするためにどうしてもフェイスプレート表面にネジ穴が露出してしまうことがあったのですが、そのネジ穴を露出させず、綺麗な表面形状のままのフェイスプレートにすることでした。
そのためにクリック機構に少しアイデアを盛り込む必要もありましたが、なんとか美しいフェイスプレートを作り上げることが出来ました。
設計する前にどのようなデザインにしたいのか?
譲れない部分を書き出して、その部分を上手くいかせるような設計をすることが肝要です。
フェイスプレートに関しては、エボナイトのほかに、Bi-Metalにしたいとの思いもあり、アルミのフェイスプレートと、ウッドも取り入れたいと当初からの願望があり、それらを取り入れるようにしました。
さて、エボナイトですが磨けば漆のような光沢が得られるんですが、この研磨がなかなか難しいのです。
削りやすいので、キズも付きやすく、時間を掛けて丁寧に研磨する必要があります。
エボナイトは機械加工しやすいのですが、合成ゴム特有のゴム臭があり、結構強烈なにおいがします。
寸法安定性にも優れているのですが薄板加工を行なうフェイスプレート加工では、加工により撓むため、精度を出しにくいです。
耐薬品性にも優れており、以前お話したようなエボ焼けの問題が無ければ中々良い材料なのですが、、もう一つ難点があります。
エボナイトは脆性材料であり、ある程度以上に力を加えると簡単に破損してしまいます。
この写真はエボナイトの中心部分に軸受を圧入しようとして少し強引に軸受を押し込んだとことろ見事に割れてしまいました。
セラミクスのような脆さのある材料なので、エボナイトをパーツとして使用する際には注意が必要です。
リールのフェイスプレートに使用する場合は、周囲をフレーム材料で囲うことで保護し、衝撃がエボナイトに加わらないようにしています。
転倒等して、エボナイト自体に衝撃が加われば割れてしまいますが、フレームで保護する役割は非常に大きいのです。
エボナイトむき出しのリールは衝撃に非常に弱く、割れ、クラックが生じる恐れがあります。
エボナイトをリールのノブに使用する際も、ノブの内部に金属製のメタルコアと言う材料を介在させ、仮にエボナイトが割れてもハンドルを回せるようにしております。
メタルコアの役割は他にもあるので、改めてブログに書きたいと思います。
纏めると、エボナイトは機械加工性が良く、磨くととてもきれいに輝きます。反面、衝撃に弱く、エボナイトを使用する際には衝撃が加わらないように保護することが必要です。
昔はエボナイトむき出しのリールがあったようですが、現在見かけないのは、ハーディーのリールのように100年以上も現役を続けられるほど耐久性が無かったのだと推測致します。
生き残ったエボナイトリールはフレーム材料で保護されているモデルばかりです。
エボナイトを使用している商品としては、リール以外には万年筆やボーリングの球程度で、あまり普及しなかったのは、この耐衝撃性の問題があったからかもしれません