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2024年上半期のリール修理事情

2024年の上半期も終わろうとしております。

今年も相変わらずフライリールの修理が多いです。

先ほどざっと数えてみたんですが、52台のリール修理を行っておりました。

半期26週間で52台なのでおおよそ1週間に2台のペースで修理を行っていることになります。

修理と言っても様々で、ネジ1個の作製から、スプールの割れの補修まで様々です。

 

最も多い修理依頼がノブの加工であり、釣行中の転倒などによりノブが破損するトラブルが最も多いのでしょう。

次はクリック不良です。

クリッカー自体が摩耗してしまい。ギヤとの接触不良によりクリックがよろしくない状態になっているリールも散見されます。

それらのリールは発売から25年とか30年とか経過しているリールが多く、中にはメーカ自体が無くなっているところもありますので、修理依頼先がない状態になっているのです。

 

1週間に2件のリール修理は大したことが無いように思えますが、例えばノブの修理を考えた場合、

特にHARDYなどは、私のノブの加工方法では4つのパーツから成り立っています。

1)ネジ  2)メタルコア  3)ザブトン  4)ノブ

2)のメタルコアはネジと同一材料で加工するパーツで熱膨張に起因する伸縮をキャンセルさせるために設けたパーツで、このパーツを介在させることでトラブルが大幅に軽減されます。

 

ネジはニッケルシルバーやブラス等で作製することが多く、メタルコアもネジ材に合わせます。

ザブトンもネジ材に合わせることがほとんどです。

ノブに関しては、エボナイトや鹿角、ウッド材等様々です。

 

さて、ノブの修理依頼があり、朝一番からネジ加工、メタルコア加工、ザブトン加工、ノブ加工を行なうと、午前中では終わらない場合が多いです。

ネジに関しては、インチネジ加工が必要で、ネジの頭にはスリワリ加工(マイナスネジ)が必要です。

ザブトン加工はサイズが小さく、部材を保持しにくく、案外加工が難しいのです。

全て加工したら組み立てて終わりと言う訳でもありません。

ノブがネジに対して加工精度が悪いと、回転しなかったり、ガタツキが大きかったりするので、現物合せで調整する必要があります。

また、すべてのパーツは研磨しており、研磨の時間等を考慮すると半日以上の時間がかかるのです。

 

サラリーマンが1カ月当たり、160時間働いたとして、給料が400000円だと仮定すると、時間給2500円となります。

朝8時から午前中いっぱい加工したとして、時間給で10000円になります。

それ以外に、材料費、装置の原価償却費、光熱費等々を考え合わせるとノブ1個の加工費は11000円ぐらいになるのです。

 

なので、ノブの修理費用は11000円+送料となります。

では、修理せずに引き出しの奥にしまってしまうフライリールが増えてしまうと思うのです。

修理費用を決めているのは、時間給×加工時間+諸費用ではなく、自分だったらこれ位なら修理にお願いするかなあ!で決めていますので、おおよそ半額に値段程度になっていると思います。

1個の修理が約4時間と仮定して、1か月に8台の修理をこなしたとして、32時間

時間給2500×32=80000円の修理に対する対価になればよいのですが、

実際は半分程度の対価になっています。

1か月のうちの4日間は非常に安い対価で働いていることになるのです。

 

修理で儲かることなどありえません。

しかし偶に修理のご縁から、ロッドやリールを注文頂くことがあり、これがモチベーションに繋がっていると言っても過言ではありません。

 

儲かりませんが、半年間で52台のリールを救ったと言えば名医です。

 

もう少し修理に関しては価格見直しをしても良いのかもしれません。

あと、商品の価格設定に関しても安すぎとの意見とたくさんいただいております。

これもリールに関してははこのままで、ロッドや小物類に関しては価格の見直しを行うかもしれません。

 

材料費の高騰が続いており、仕様パーツの高騰により結構ダメージを食らっております。

まずはほんの少しリール修理代金の見直しから始めるかもしれませんので、調子の悪いリールをお持ちなら今がラストチャンスかもしれません。