アリハートのリールは斬新で私では想像もできないデザインで、それでいてどんなロッドにも不思議とマッチする素晴らしいリールだと思っています。
今回の依頼はこのレムコリールの初期型を改造して欲しいというものでした。
というのもこの初期型のリールはスプールの外側に2本の円弧状のフレームが付いており、スプールを保護しているのですが、この円弧状のフレームは写真の10時と2時半の位置に円弧状のフレームを固定するためのジョイントが設けられており、このジョイントが本体にネジ止め固定されている構成となっております。
斬新なデザインなのですが、この初期型にはラインガードがなく、フライラインが絡まりやすいとのことで、これを何とか解決できないかとのお題を頂きました。
但し、オリジナルの形態はそのまま残しておきたいので、後付けできるようなラインガイドを付けたいとの要望でした。
上述したようにこのリールはスプールの外側に2本の円弧状のフレームが付いているのですが、この2本のフレームはジョイント部にロウ付けされているのです。
ロウ付けされていなければ。円柱にフレームと同サイズの穴の開いたラインガードを挿入すれば簡単にラインガードにできるんですが、両端がロウ付けされているので、この方式では取り付けることが出来ません。
ではどうしたら良いかと考えた結果、ラインガードを2分割して取り付けようと考えました。
円柱状のニッケルシルバーを半分に加工し、ラインガード2本のフレームを挟み込むようにネジ固定することにしました。
また、フレームを挟み込む部分を半円状に加工してフレームに挟めるように加工しました。
オリジナルの形態はそのまま残しておきたいとのことで、後付けのこのラインガードを固定する際にも2本のフレームを傷つけないように配慮し、少し大き目のボールエンドミルで半円状の加工を行ない、フレームに取り付け時には、緩衝材をかまして締め付けるように配慮しました。
写真で見ると大きく見えますが、ラインガードの径は5mmなので、半円状に加工したり、ボールエンドミルで半円状の溝加工するのは結構大変な作業ですし、ネジ位置を合わせて、加工するのも精度が必要なのです。
また、挟み込んでネジ止めする部分には座グリ加工を行なっております。このネジ穴に合うようなネジもないので1からネジも加工しました。
加工して仮固定したものです。
実際には2本のフレームに熱収縮チューブをカットして取り付けてからラインガードで挟み込んでネジ固定することにしています。
オリジナルの形状を変更すること無く、また、傷つけることもなく、ラインガードを取り付けることが出来ました。
2本のフレームとスプール間は約3mm程度なので寸法的にギリギリでしたが、スプールと干渉することもなく、無事に取り付けることが出来ました。
これでフライラインが絡まる事もなくなるでしょう。
デザインを損ねることもなく取り付けできたのではないかと考えております。
このリールの後期型にはラインガードが標準装備されているとのことで、結構クレームがあり対応したのではないかと推測致します。
このように色々と考えて形状を見つけ出して、加工して、うまく取り付けられて機能すると満足度は高いのですが、加工に踏み切るまでに、色々を形状を考える時間が結構長いのです。
加工したものを目にすれば簡単に思うかもしれませんが、限られた空間、色んな制限の中から答えを導き出す作業には時間を伴うものなのです。
だからと言って考えてる時間分の対価を請求することも出来ませんし、加工に失敗して作り直しなどがあった場合においてもその時間分の対価を頂く事はありません。
ですから、短時間で失敗しない形状を導き出さないといけません。
だから、引き受けるところがないのでしょう。
そんなニッチな要求を叶えるのがRetro rod&Reelの役割なのかもしれません。