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Wrapping

ラッピングは静かな作業で、ほとんど音が発生しません。

静かな作業と言いうのはそう多くなくて、音楽でも聴きながら作業を進められるので、嫌な作業ではないのですが、なんせ細かな作業が丸1日続くので、眼精疲労による肩こりが凄い事になるんです。

また、ラッピング中はなぜか息を止めてしまうことが多く、集中するといつもその後にどっと疲れが出てしまうのです。

 

さて、今回のラッピングはブランク持ち込みの組立依頼でした。

丁度グラスロッドのラッピングを控えていたので、一緒に行うことにしました。

何度かラッピングカラーのやり取りの後、ラッピング開始です。

 

私のお気に入りのラッピングスレッドは、シルクのスーパースレッドです。

よく、ラッピングに市販のミシン用シルク糸ならカラーも豊富なので、これを使っていますと言うビルダーも多いのですが、豊富なカラーがあるのは#50のスレッドサイズなんです。

 

私が好んでいるシルクのスーパースレッドは#150ぐらいに相当します。

#50を使用しているビルダーが#150のスレッドでラッピングすると凄くしんどいと思います。

反対に普段#150でラッピングしていれば、#50はいとも簡単にラッピングすることができます。

 

普段からこの細かなラッピングに体を慣らしていれば、ラッピング技術は向上すると思い、細いスレッドで、出来るだけ繊細なラッピングを心掛けています。

今回、トリムのシルクスレッドはカラーの関係で#100のシルクラインで行っています。

 

静かなラッピングが終わり、スレッドにエポキシを含侵させていきます。

このエポキシ塗布に関しても各ビルダーさんにより色んなやり方があるのかもしれませんが、私流のやり方としては、

1回目はシルクスレッドに染み笑る程度にエポキシを浸透させます。

2回目はロッドモーターで回転させながらエポキシを塗布していきます。

 

写真は2回目のエポキシを塗布して乾燥後の状態です。

丁度写真のブランクの中心付近がラッピングの開始点、終了点となっており、スレッドを引き抜いた後が見えると思います。

また、トリムも同様の場所で余り糸をカットしていますので、2回目のエポキシ乾燥後でも、エポキシが綺麗にスレッド部分をカバーできていないことが判ります。

スレッドを引き抜いたり、カットしたりすることで、糸目が多少盛り上がったり、カットしたスレッドが少しはみ出たり、スレッドのケバなどが悪さしてエポキシが綺麗にコーティングできていない部分が出来てしまうのです。

写真では光の反射具合が均一でないように見える部分です。

 

ここで、このエポキシが綺麗にコーティングできていない原因部分をデザインナイフで薄く削って修正していくのです。

ラッピング個所全部を確認し、コーティングが均一でない部分を1つづつナイフで削って修正していくのです。

この作業で修正してやることで3回目のエポキシが均一にコーティングできるようになるのです。

 

3回目のエポキシコーティング後の状態です。

スレッドをカットしたりすることに起因するエポキシの不均一部分はデザインナイフによりカットされエポキシが均一にコーティングされていると思います。

 

エポキシ塗布が上手くいかない原因はスレッドに起因しているのですが、このようなめんどくさい作業を行うことなく、エポキシを厚塗りしてごまかしたりするメーカーも多いようですが、きちんと丁寧に作業することで、綺麗な仕上がりになるのです。

 

綺麗な仕上がりに近道はなく、黙々と、淡々と、丁寧に作業することこそが、綺麗な仕上がりへと続くのです。

 

ラッピングは目で見ることができます、ロッドを手にしたら否が応でも目に入ってしまいます。

この目に入る部分に気を使って丁寧に仕事をしているのかどうかは、ロッドを見れば一目瞭然なんです。

だったら、一目見ただけで、綺麗で丁寧な仕事をしていると判って頂けることでもあるのです。

 

また、シルクレッドでのラッピングは色止め剤を使用しないとスレッドが透けてしまい、ガイドフットが透過して見えるのです。

このガイドフットの処理についても、丁寧にフットを削っているのか?市販のまま使用しているのか?等々ロッドを見ることにより、そのロッドがどのように作られているのかを垣間見ることができるのです。

 

この仕事を生業にしているので、手を抜くことはありません。ロッドを見て私の仕事ぶりを判断していただきたいと思っています。