先日、修理依頼のリールを何台かお預かりしました。
その中でA.T.H(アリ ハート)のリールが複数台ありまして、修理と言うか、メンテの忘備録としてブロブに残したいと思います。
A.T.H(アリ ハート)のリールは当然のことながらその斬新なデザインで有名ですが、私自身あまり詳しくなくて、このリールのモデル名などは本体に記されていないために判っていません。
左巻きで使用しているが、順方向も重く、ドラグが掛かったような感じとのことでした。
ワンウェイベアリングの状態なのかも?なんて考えながら、まずは分解して状態確認をしようと思います。
まずはスプールを外して.....
あれ、どうやってスプール外すんや、これ いきなり戸惑っています。
Netで検索しようにもモデル名が判らず、思うページをヒットできません。
スプールの外し方は、裏面のドラグ調整ダイヤルのゴム製のカバーを取り外し、ダイヤルにねじ込まれている小さなねじを外してから、ダイヤルを緩めるとスプールを外すことができます。
他のA.T.H(アリ ハート)リールはスプールを固定しているネジを緩めるとゴムのシールが緩んでスプールを簡単に取り外すことができるので、このリールは少し戸惑いました。
何とか無事に分解し、ワンウェイベアリングを確認しようとしましたが、
なんと、ワンウェイべリングではなく、もっともっと原始的な方法で1方向にだけ回転を伝える方式を採用されています。
写真中央の一番下の円筒状のシャフトにコイルが巻かれているパーツこそがワンウェイベアリングと同様の働きをするパーツなのです。
円筒状のシャフトとコイル内径はほぼ同じで、コイルがシャフトにはめ込まれています。
コイルの巻き方向と同じ方向に回す分にはコイルはシャフトを締め付けるように働くが、シャフトとの間で滑りが生じてコイルを固定していればシャフトのみが回転することができます。
反対にコイルの巻き方向と反対方向にシャフトを回そうとすれば、コイルのバネの反力によりシャフトに対してブレーキが掛かり、シャフト単体での回転は出来なくなるのです。
身近なもので言えば、サイズ違いの六角レンチをの端部をコイルバネで固定してリングに束ねているレンチセットがあり、その束から1本の六角レンチを外すには、コイルバネの巻き方向と同じ方向に回転させれば取り外せますが、反対方向では取り外せないレンチセットを見たことがあるのではないでしょうか?
正にその原理を利用しているのです。
シャフトを確認したところ、長年空転してきたためかシャフト表面に細かな傷がついておりました。
また、シャフト材とコイル材は異種材料がコンタクトしている状態なので、釣りに行きこの部分に水分が付着した状態で放置するとイオン化傾向が異なり、電池となり電食すると考えられます。
キズ除去と表面を整えるためにシャフトを研磨して、スムーズに回転するように調整し、グリースアップしておきました。
後は分解と逆順で組み立ててスプールを回転させると、スムーズに回転することが確認できました。
コイルバネの特性を理解したうえで、ワンウェイクラッチとして使用するとは、正にコロンブスの卵で、衝撃を受けました。
私は常日頃から思っていることがありまして、
ヒントはあらゆるところにあり、それに気づくか気づかないかの差だけなんだと!
自分からヒントをキャッチしようとする姿勢でなければ、ヒントに気づくことはないのだと改めて感じたのでした。