このリールも先日お預かりした複数台のA.T.H(アリハート)リールの1台です。
左巻きで使用しているが、順方向の巻取りもドラグが掛かったようになっているとのこと。
先日のA.T.H(アリハート)リールと同様に裏面のゴムキャップを外して、小さなスリワリネジを取り外して、ドラグノブをCCW方向(反時計方向)に回すと分解できました。
このリールは、スプール部のノブを緩めるとスプールを取り外すことができるタイプで、やはり簡単にスプールを取り外せるのはメンテナンスから言えば重要です。
前回のタイプのA.T.H(アリハート)リールよりもこのリールの方が多分新しいリールなのでしょうけど、私には知るすべがありません。
分解してみると、ワンウェイベアリング付きのタイプでした。
写真では左から2番目の真鍮製のスリーブにベアリングが嵌り込んだパーツがそれです。
ワンウェイベアリングを持って回してみると、どちらにも回りません。
ワンウェイベアリングなので、1方向には回転し、逆方向には回転しないモノなのですが、両方向に回転しないので、両方向でドラグが効いてしまうのです。
ワンウェイベアリングを取り外して、ベアリング内部に潤滑材を吹き付けてみると、潤滑剤に錆が混じります。
前回も言いましたが、ベアリングの構成金属と、真鍮製のパーツが接している状態なので、この状態で水が介在すればイオン化傾向が異なるので、電池となり、イオン化傾向の大きな材料が溶け出すことによる電食が生じると考えられます。
一般的にはグリスアップして、両金属が密着しないように絶縁層を形成していれば問題ないのかもしれませんが、長い事酷使されグリース切れ状態で水につかったりすると腐食の原因になるのでしょう。
さて、潤滑剤を吹き付けてはベアリングを回すことを何度となく繰り返していくと徐々にベアリングが回り始めましたが、真鍮製のスリーブにはめ込むと回りません。
腐食により、スリーブ外径が少し大きくなったのかもしれません。
スリーブを少し研磨して、問題なく回転できることを確認し、ベアリング内部にグリースを注入し、組み立てなおしました。
順方向の回転は軽やかに、ドラグは効いています。ドラグを締め込んでも順方向の回転はスムーズです。
これで問題は解決できたようです。
年間に約100台のリールの修理を行っています。
ですが、修理の専門業者ではなく、直せるようであれば直します的なスタンスで取り組んでいますので、すべてのリールを修理できるほどの腕は持ち合わせてはおりません。
本業のリール加工、ロッド作製の合間に、お困りのリールを何とかできればと思っているのです。
修理からの繋がりで、名前を憶えて頂き、そのうちにロッドやリールを手にして頂ければ嬉しいです。