
BAUERリールのフレームが変形したので何とか使える状態にまで修復できないでしょうか?との依頼がありました。
到着したリールを見て、愕然!なんだこの変形は!といった感想です。
鋳造品のリールであれば完全に割れていたであろう衝撃により、フレームのリールフット固定部付近が大きく変形しております。
衝撃でリールフットも外れてしまったようです。

スプール自体は変形しておらず、スムーズに回転するのですが、リールフット固定部付近が大きく変形しており、どのように修理すべきか考えました。
いろいろ考えましたが、叩いて修復する以外に思いつきません。
バイスに挟んでプラスチックハンマーでガンガン叩きます。
叩いていくうちに少しずつ形状が修正されているように思います。
兎に角ガンガン叩きます。
リールフット固定部の一部細くなった部分がスプールに裏面溝部に収まる状態になるように叩いていきます。
あちらを叩いて、こちらを叩いて、スプールを嵌め込んで回転状態を確認して、また叩いてを繰り返していきます。
こうやって叩いて完璧に修復できるはずがありません。
取り敢えずスプール裏面に収まるような状態までとにかく叩いて、後はスプールに干渉している部分を調整していくしかありません。
何とかある程度まで修復できたので、リールフットを取り付けます。
ネジ穴は衝撃で使用不可の状態です、ネジサイズは1/8インチ(約3.18mm)なので、この穴を下穴としてM4.0のタップ加工を行ないオネジも加工しました。

完璧ではありませんが、何とか使用に耐えられる状態まで叩き込むことが出来ました。
ロッドに装着すると少し傾くかもしれませんが、それでも使用不可能な状態から、何とか使用に耐えられる状態にまで回復できたのではないかと思っています。
叩いて修復する板金作業的なことは初めての経験なので、よくここまで修復できたと自分でも驚きです。
またこのリールで思い出の続きを刻んでいただけると思います。
私の作製するリールはリールフットのピラー径を他のピラーよりも細くしています。
また、フットピラーにフットとネジ止めするためにピラーの中心部にM2.0のネジ加工を行なっています。
これにより、転倒等のアクシデントがあった場合、一番弱いフットピラーが変形するようにしています。
こうすることで、自動車で言うところのクラッシャブル構造のようにフットピラーが変形することで衝撃吸収し、フレームや他の部分への衝撃を和らげる構造にしているのです。
フットピラーが変形したならば新しいフットピラーに交換すればよいのです。
リールを設計するときに考えたのは、余計なネジがリール表面にできるだけ露出しない事と、この衝撃吸収構造と、控えめなクリック音と、クリック部分のユニット化構造でした。
GWは釣りにも行けそうにありませんが、結構毎日楽しく作業をやっています。