
AMPEX Reelの修理依頼がありました。
右巻きに巻き方向変更して欲しいとのことで、お預かりしました。
自分でトライしようとしたのか、現状ではうまくスプールが回転しないとのことでした。
AMPEX Reelはキロワールドさんが作製しているリールで3つのラチェットを組み合わせて、ディスクブレーキが掛かるような仕組みになっています。
リール到着後、まずは現状スプールが回らないのは何故かを確認するため、分解して、組み上げてみることにしました。
何度組み上げようとしても、スプールに取り付けられているラチェットバネが外れて、ラチェットがギヤに噛み込んで回転しないのです。
結構な時間を費やすも上手くいきません。
良く観察すると、スプールに取り付けられているラチェットのの向きがおかしい事に気が付きました。
ラチェットとバネを取り外して、方向を入れ替えて組み上げると上手く回転するように組み上げることが出来ました。
どうやら、右巻き仕様に変更しようと途中までトライしてみたものの、途中でギブアップしたのではないかと推測致します。
そんなことは知らず、組み上げようとしたので、何度やって途中でバネが外れてしまっていたのです。
時間は掛かりましたが、うまく組み上げることが出来ました。
しかしながら、大きな問題があるのです。左巻きのこのリールを右巻きに変更するにはノコギリ刃状のギヤの向きを反転する必要があるのです。
裏返せば反転使用できると思っていましたが、表と裏で構造が異なり、反転使用できない構造なのです。

一旦は諦めて、元の左巻きに組み上げて依頼者さんにギヤ加工しないと巻き方向変更が出来ない旨を伝えましたが、それでも何とかして欲しいとのことだったので、ギヤを加工することにしました。
純正ギヤ(写真左)にはスラストベアリングの受けが嵌め込まれています。
スラストベアリングのサイズを計測して同サイズのベアリングを注文し、その間に他の部分の採寸と図面作製、加工を行なっていきました。
1個だけの加工なので、旋盤作業に関しては、マニュアル加工で加工しました。
ギヤに関してはCNCフライスでの輪郭加工でギア形状を再現いたしました。
スラストベアリングの受けを嵌め込んでギヤを回転させるとスムーズに回転することを確認し、組み上げ作業に入ります。

現状に左巻きから右巻きへ変更するには3つのラチェットの方向を反転させればよい事は確認済みなので、粛々と作業を進めます。
写真左の小さいAMPEXリールも左巻きから右巻きへの変更です。
こちらは分解し、クリッカーを挟み込んでいるΩ形状のパーツを反転させれば右巻き仕様に変更できます。
AMPEX リールの組み上げも完了し、ハンドルを回してみると、順方向は軽やかに、反転方向はディスクドラグが掛かるようになっていました。
今回、ギヤ加工まで行うということで、どうなることかと思いましたが、何とか修理することが出来ました。