
2月にお預かりしたグラスブランクの組み上げがようやく終わりました。
4カ月も掛かるの?と思われるかもしれませんが、懇意にしているお客様で、急がないとのことだったので今になったということです。
さて、ブランクは今はなき原宿ノリエさんのAmberstar 7'03" #3 5pcsです。
このロッド、私の所有しておりました。
アクションがすごく気に入っていたのですが、人の手に渡ってしまいました。
少し話は外れますが、初心者のフライマンを渓流に案内した際に、彼はカーボンの7’ぐらいのロッドを使用していました。
振らせてもらうとTipアクションのいわゆるピンピンの竿でした。
渓流を案内しながらポイントを指定してそのポイントにフライを落とせば釣れるはずなんですが、そこにフライが入らずに苦労しているようです。
距離にして5m程度で、ロッドのTipから1m程度しかフライラインが出ていない状態でのキャストを強いられ、フライラインが短いのでキャスティング時にロッドに負荷を与えることができず、ロッドの弾力を利用したキャストにならないのです。
強引に負荷を掛けようと強く、早いリズムでキャストしていますが、ポイントにフライが落ちることが稀なので中々フライに渓魚がアタックしてきません。
何度も言っていますが、1キャストでポイントに入れば80%釣れるとしても、2キャスト目だと40%、3キャスト目だと20%と釣れる確率はぐんぐんと低下していきます。
ロッドに強引に負荷を掛けないとロッドが曲がらないのを見かねて、私が使用していたAmberstar 7'03" #3 5pcsを振ってもらうとゆっくりと振ってもロッド自体の自重によりロッドが曲がり、その復元力でフライラインが1mほどしか出ていなくてもフライをポイントまでターンオバーさせることができるのです。
ロッドを振るのではなくて、STOPさせることを意識するように声を掛け、指定したポイントにフライを打ち込み渓魚を釣り上げたのです。
それから、ずっとそのロッドで何匹かの渓魚を釣り上げて満足しているようでした。
帰りの車の中で、初めて購入したカーボンロッドは、どんな釣りを好んでいるフライマンか判らない状態でも万能なロッドとして薦められたロッドだと思うので、逆を返せばどにょうな状況の釣りにおいても中途半端なロッドなんだと説明しました。
反対に今回私が使用していたロッドは至近距離に特化したロッドであることも説明しました。
すると、このロッドを譲って欲しいと懇願され、泣く泣く手放した経緯がありました。
さて、ロッドビルディングに関しては、ラッピングスレッドをテスト巻きを行ない、ラッピングカラーの指定をお願いしました。
上段はラッピング後、下段はエポキシコーティング後をイメージするためスレッドを濡らした状態の写真です。
一番左のオリーブを選択していただきました。トリムカラーはRedです。

時間のある時にガイドフットの成形やフィラー金具等を加工しておいたので、組み立てに入ると一気に仕上がります。
と言いながら、ワインディングチェックの加工、口割れ防止金具の加工等々で時間をとられてしまいますが....。
ガイドラッピングは、1ガイド2か所のラッピングとすると、計26箇所
トリムは飾り巻き部分を含めて33箇所
朝から一気にラッピングを行ない、その日のうちに1回目のエポキシコーティングまで行いました。

ラッピングは好きな作業です。好きな作業だと自分に言い聞かせることで苦痛をごまかしているのかもしれませんが、静かな時間が流れるので、音楽を聴きながら優雅にラッピングを行ないます。
優雅に丸1日ラッピングを行ないますと、眼精疲労からの肩こりで翌日は両肩がバキバキになってしまいます。
今回フックキーパーはシングルフットを使用したキーパーにして欲しいとのことでしたので、要望通りに取り付けております。グリップ形状とワインディングチェックとのつながりも美しく、良い感じに仕上がったのではないかと思います
ブランクカラーとラッピングとのコントラストも綺麗です。赤のトリムも良いアクセントになっています。
この後ロッドソックスをミシンで作製し、Amberstarロッドの完成です。
振ってみましたが、やはり、私好みのアクションでした。