
ノブの加工は修理の中で一番多く、やはり皆さん渓流で転倒したりするアクシデントを経験して、達人へと向かっているんだなあと感心しています。
さて、私が作製するノブは何度も何度も言っていますが、ネジ、メタルコア、ノブ、(ザブトン)で構成されています。
ザブトンについては元々ザブトンの付いているハーディーやORVISリールの場合です。
通常と異なるのはメタルコアで、これはネジと同材質で加工しています。
今回の場合だとニッケルシルバーです。
ノブとネジの関係はノブよりもネジの方が0.05mm程度長くすることでノブが回転加工になるような構成にしているんですが、異種材料の場合温度差によってこの0.05mm設定の隙間が変わってくるのです。
温度差40℃程度ではノブが回らなくなることはないのですが、温度変化によりこの隙間量が変わることは気持ち悪いので、この伸縮に影響する部分を同材料で加工することに大きな意味があるんです。
なので、ネジと同材料のメタルコアを介在させることで温度変化に影響されない隙間をいつも確保しているのです。
メタルコアは写真のノブのネジ頭周辺にリング状の金属が僅かに見えているのですが、パイプ状のものにノブを被せているような構成となっています。
私のリールはすべてこの構成にしています。
また、修理依頼のあるリールも大半がこの構成にしているんですが、稀にこの構成にこのできないノブ構造も存在します。

このノブはWATER WORKSリールのノブなんですが、ノブの中央部分がくびれており、またノブ上部もネジ頭の座グリとノブ外径差が小さいため、メタルコアを介在させるスペースがないのです。
花梨瘤材とエボナイトで加工しましたが、案外同じ形状を作り出すことが難しそうだったので、この外形形状はNCプログラムを作成して加工しました。
1つのネジに対してノブを加工するためにはネジ長さよりも0.05mm短いノブを作製する必要があるんですが、ノブ高さ、座グリ深さが精度良く加工できていなければ0.05mmの隙間を確保することだ出来ないので大変なのです。
1つのノブに1つのネジであればその関係性だけに気を付ければ良いのですが、1つのネジを共有する場合は相似形のノブを加工する必要があるので大変でした。

実際には加工が出来たと思っても肉厚の薄い部分が欠けたりと歩留まりの悪い形状なので思った以上に時間が掛かったのです。
また、この状態からコーティングを行なうとコーティング剤が座グリ穴にたまると見かけ上の座グリ深さが変わることとなり、0.05mmの隙間に影響してしまうので、コーティングにも気を遣うのです。
と言うことで、色々と修理も相変わらず続いていますが、今製作中のYomogiロッドが完成したら、少し時間を割いてリールの加工をしたいと考えています。
高知の中野川クラブへの展示用と、ご注文頂いているリールの加工を行ないます。
同時にブラスの花梨バール材のリールも作製予定です。
これは花梨紅白材での加工で、なかなか材料確保が難しいのと紅白部分は硬さが異なるので加工に気を遣うのですが、出来上がりはなかなかなものになりそうなので今から楽しみです。