
Ted Godfreyのマルチプライヤーリールの修理依頼がありました。
1) ノブの破損
2)スプールに引っかかりがある
とのことです。
ノブの外れてしまった部分からは元の状態が想像できません。
色々とネットで情報収集して形状が判ったのですが、S字ハンドルに残っているパイプ部分はS字ハンドルにカシメられていて、このパイプにノブを取り付けてからカシメているようです。
なので、後からノブだけを作り直すことが出来ない構造なのです。
ということでこのパイプを切断しました。
S字ハンドルの裏面にはカシメた部分が凹状態になっています。
この部分にM2.6mmのネジ頭が収まりそうなので、裏面からネジでノブのシャフトを固定する方法でノブを取り付けることにしました。
毎度のことですが、メタルコアを加工してシャフト、ノブをそれぞれ加工していきます。
ノブは黒系がいいとのことでエボナイトで加工を行ないました。

次はスプールの引っ掛かりの対応です。
ハンドルを回してみると時々ハンドルが急に重くなる症状が現れます。
Ted Godfreyリールの分解方法ですが、ハンドルを固定している中心ネジはハンドル自体に固定されています。
ですからリールのフレームを手に持ってスプールを抑えた状態でハンドルを右回り(時計回り)に回転させるとハンドルが外れます。
通常のネジではなく左ネジなのでご注意ください。
ハンドルが外れたら、裏面のセンターネジを左方向(反時計方向)に回転させるとリヤのサイドプレートが取り外せます。
反対に組み立てる際にはスプールのピンとサイドプレート側に穴を合わせるのですが、このピンは対称位置に形成されていないので、ピンと穴位置をよく確認してから取り付けるようにしてください。
あとはスプールを抜き取ればギアが露出してきます。
このリールはマルチプライヤーリールでハンドル1回転でスプールは1.7回転位回ります。
ギヤを組み合わせることで高速にラインを巻き取ることが可能です。
その反面、このギヤ比の影響で急激にラインを引っ張られた際の抵抗が増え、ラインブレイクする恐れがあるという人もいます。
私的にはその抵抗よりもドラグの抵抗の方が大きいのであまり気にしなくても!と思うのですが...。
ギヤを覆っているカバーを外すと大量のグリスが出てきました。
古いグリスは粘度が増加しそれ自体が抵抗になることがあるので一旦このグリスをすべて取り除くためウエスでグリスを大まかに取り除き、細かなところはピンセットにティッシュを巻き込んで取り除いていました。
写真上のギアは2段ギアになっていて、この見えていない部分のギヤのグリスを取り除いていると、ティペットが出てきました。
最初は30mm程度のものが数本、更にグリスを取り除いていると150mm程度のティペットが巻き付いていました。
察するにこのギヤに巻き付いたティペットの端がギヤに噛み込むとスプールの引っ掛かりとなるのではないかと考え、残りのグリスを取り除いた後、全体を洗浄して、新たにグリスアップを行ないました。
組み付けてハンドルを回すとスムーズに回転します。

分解、グリス除去、洗浄で案外時間を費やしてしまいましたが、組み上げて何度も回転させてみましたが、スプールの回転はスムーズで、多分私の考察のような状態になっていたのだと思います。
それから、、このリールは中古品で手に入れたとのことでモデル名や製造年代を知りたいとのことでした。
私も詳しくないので、そういう時にはご本人さんに確認と言うことで、Tedさんに聞いてみました。
1990年に作製したカスタムリールです。
との回答でした。
希少なモデルだと思われますので、どうぞ大事に使用していただきたいと思います。