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ハンドクラフト展雑記

2026年のハンドクラフト展を終え、今思うことです。

初めてハンドクラフト展に参加したのは2018年で来年で10回目の出展となるわけですが、

思い返せば2015年の8月に希望退職を選択しました。その際に同僚たちは同業会社や他社への斡旋に従い次々に就職先を決めていました。

私にも数社からお声が掛かりましたが、退職金+割増金+10か月程度の失業保険があるので3人の子供を大学卒業させることなど問題ないと考えていました。

退職当時高校2年生の息子、中学2年生の長女、中学1年生の次女がいました。

 

退職金+割増金で3000万円ほどあり、貯金も少しはあったので残りの人生は自分の好きなことをやって生きると決めたのでした。

漠然とフライリールを作ってみたいとの思いがあったので退職後職業訓練校に半年通ってCAD,NCの勉強をしました。

結構熱心に勉強し、3次元設計や、3次元設計したものをNCデータに変換するCAMに関しても学びました。

職業訓練校を卒業後にNC旋盤とNCフライス盤を選定し、自宅の2回に設置し、作業環境を整えつつ、リールの設計を開始しました。

2016年10月にRetro Rod&Reelを設立しましたが、いきなりリールが加工できるわけもなく、勉強していたSolidWorksという高額CAD・CAMソフトから初心者向けのソフトに代わることで扱い方が異なっていたり、CAMへの変換時のマシンの加工条件等加工経験がないと周知入力が難しい加工条件を決める作業時時間がかかったり、そもそも何の意味かも分かりませんといったような入力画面になったりするとその都度検索して勉強しての日々が続きました。

 

リールのデザインに関してはレイズドピラーリールを作製したいとの思いは変わらず、

ではどこにオリジナリティーを出していくのか?を考えました。

レイズドピラーリールの形状自体はある意味普遍的であり大きな特徴を出すべきではないことは承知している者の、まったくのコピー品を作るのにも抵抗があったので、設計段階で色々と考える時間が必要でした。

フレームはアルミ、サイドプレートはエボナイトという組み合わせでスタートすることは決めており、その中でクリックと裏面のサイドプレートに特徴を出そうと考えました。

 

通常のクリックは三角形のポールがギヤに接してカリカリという音が出ます。

私はこの音がもう少し小さくて細かなステップであればいいと思っていました。

手持ちのお気に入りのリールを1回転させたときのステップ数が30だったので自分が作製するリールは36ステップにしようと思いギヤの選定、そのギヤにどうやってクリックが接する構成にするのかを色々とデザインしてみました。

その中でボールプランジャーをギヤに対して接触させる構成にすることでカチカチではなくもう少し音が小さく、なめらかな音がすることに気付き、このボールプランジャを採用したいと考えました。

 

もう一つ通常のクリックでは三角形のポールやポールにテンションを与えるためのバネを固定するためにサイドプレートにネジ加工しており、サイドプレートには少なくとも3つのネジ穴が露出していたのです。

エボナイトの桎梏に研磨された艶めかしいつやの中にあるネジ穴は邪魔であり、リールデザインにおけるノイズだと思ったのです。

 

サイドプレートに穴を設けずにクリックを構成するためにはどうすべきか!

 

ドーナツ状のプレートにプランジャを修める部分を加工し、そのプレートに小さな突起を設け、その突起がサイドプレートの内側に設けた凹部にはまり込む構造にすることでクリックユニットを固定しようと考えたのです。

また、分解、組み立て時にこのドーナツ状のクリックユニットが落ちたりすることが気になったので突起と点対称の位置にマグネットを埋め込み、サイドプレートの内側にも同様のマグネットを埋め込むことでマグネットと突起によりクリックユニットは脱落することなく一義的に位置決めされ、また、凹部に対して凸部を少し小さくすることで遊びが生まれ、スプール側のギヤに対してセルフアライメントさせることができたのです。

 

この構造により理想とするなめらかなクリック音とネジ穴(ノイズ)のないサイドプレートを実現することができました。

 

リールの機構上の設計は終わり、つるや釣具店の山城さんにロッドとリールを送り、ハンドクラフト展に出展したいと懇願し、許可いただいたのが2017年の秋だったと思います。

 

そして迎えた2018年のハンドクラフト展

バンブーロッドの注文を頂きましたが、それも知り合いからだったので、新参者のどこのだれか分からん奴には見向きもされないような結果となり、帰りの新幹線の中で、どうすべきかをずっと考えていたのを覚えています。

 

その後もっと気軽に購入できるGoods類を考えていた際に思いついたヒンジ構造でフライボックスやフロータントケースを加工することになり、マグネットリリーサーやスタッカーに関しても普通とは少し異なるアプローチで作製していきました。

 

今でも東京に向かう新幹線ではドキドキしますし、帰りの新幹線では反省でいっぱいになります。

退職してから約7年ほどで退職金や貯金を溶かし切り、日々の生活がギリギリの状態でしたが、何とか耐え忍んで子供たちが大学を卒業し、今を迎えています。

子どもたちにお金がかからなくなった分だけ気分的には楽になりましたが、世間の同世代の方々に比べると格段にレベルの低い生活になっています。

 

でも、その生活を経て迎える老後はきっと楽しいだろうと信じて、毎日好きな時間を過ごしています。

一つ言えることは、「私はなりたかった自分に成れている」ということです。

 

皆さんは夢を叶えられていますか?