つい最近までリールシート用金具を加工していました。
リングの形状に関しては様々なデザインがあります。 個々のビルダーさんのこだわりもあるとは思いますが、加工サイドから見たリング形状に関しての記事を読んだことがないので、今回はその辺のお話をさせていただこうと思います。
写真左は最外周にローレット加工されたリングです。
写真中央は窪み部分にローレット加工されたリングです。
写真右は窪み加工はありますがローレット加工されていないリングです。
この3つのリングで一番加工しやすいリングはどれか分かりますか?
正解は右のローレットのないリングです。
2番目に加工しやすいのは左のリング
一番加工しにくいのは中央のリングです。
溝内にローレット加工するためには、その溝に収まる幅のローレットの駒が必要になります。
その駒を加工するのに時間がかかります。
それ以外にローレット加工というのは、いわゆる転造なので、ローレットの駒をリングの溝内に押し付けた状態でかいてんさせ、ローレットの駒の形状を溝内に転写させるのですが、転写させるためには強い力で押し付けて、リングを塑性変形させるのです。
この時に削れたリング材料が排出されれば問題ないのですが、溝内という狭くて深い溝内で転写が行われているために削れたリング材料が上手く排出されず、ローレットの駒の模様内に残っていると、その削れたリング材を溝内に転写してしまうことで、ローレットの模様が綺麗に転写できずに、汚くなってしまうことがあります。
切削油をかけながら低回転で転写していきますが、100%の歩留まりとはいかず、中には80%ぐらいになってしまうこともあります。
溝内ローレットは滑り止めの意味をなさず、あくまでも宝飾的な意味合いしかありませんので、ローレットを施す場合は最外周に転写するような構造にする方が加工側からすればやりやすいのです。
リングは1個ずつ加工するわけではなく、例えば5個連続で加工したりする場合、溝内のローレットは1個ずつ溝内にローレットを位置決めして転造していきますが、最外周の場合は一番端のリングの最外周で位置決めしたら、そのまま旋盤のZ軸を移動させ5個分を一辺に転造することができるのです。
このような理由から、ローレットに関しては、歩留まりに影響するので、ローレット加工のない形状が一番安価に加工できると思ってください。
次に最外周であれば一度にローレット加工できるというメリットがあります。
溝内ローレットは、歩留まりが悪く、1個ずつのローレット加工になるので、時間的、歩留まり的に値段が上がってしまいます。
次にリングの内径加工に関してですが、写真のように内径の端部にテーパーを付ける形状にすると、価格上昇の原因になります。
というのも、5個連続して連なった形状で一気に内径加工をしていくので、テーパー加工していると5個連続での内径加工ができず、1個ずつのリング形状に加工してからテーパー加工をしていく必要があるために時間がかかるのです。
突っ切り代があるので連続加工でテーパー加工もできなくはないはずなのですが、中ぐりバイトがバイトホルダーから50mm程度飛び出した状態で内径加工していくので、テーパー部分の精度をどこまで追い込めるかが分からず、トライしていないというのが実情です。
材料代が高騰しているので、あまり冒険はできず、確実な方法での加工になってしまいます。
キャップに関してはこれは止め穴加工なので複数個の連続加工はできず、あくまでも個別加工になってしまいますが、ローレットに関してはリングと同様です。
内径端部のテーパーに関しては、個別加工なので、特に問題はなく、工数が増える分だけ少し値段に影響しますというレベルです。
金具類の加工を依頼される際には上記を踏まえてデザインされることをお勧めいたします。
デザインする時点から相談いただければ助言できると思います。
それに加え、加工精度、特に内径公差がどの程度必要なのかによって価格に大きく影響致します。
例えば内径17.0±0.1mmと17.0±0.05mmでは価格が変わってくるということです。
ビルダーさんは注文時に公差指定することはまずありませんが、加工すす側から言えば公差が分からなければ見積もりできないというのが正直なところなのです。
また、厳しい公差を指定してもフィラー側の加工、研磨、コーティングで精度良い加工を繰り返すことは至難の業なのです。
リング1個の公差が必要なわけではなく、キャップとの内径差が重要なのであれば、公差を厳しくするのではなく、2つの内径差を指定した方がいいのかもしれません。
ということで、加工サイドから見たデザインについてのお話でした。
追伸 リールの修理は、今比較的時間に余裕があり加工ができるかもしれません。 6月になると田植えや農作業が増えるので、修理依頼がある場合はお早めに!!
